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多摩川の水を守る山村の活動、山梨県小菅村を訪ねて

2017/11/27 ライター:BE EARTH-FRIENDLY源流探検部

本記事はDAIWA(グローブライド株式会社)ホームページの記事より転載したものになります。元記事はこちら→http://www.daiwa.com/jp/fishing/be_earth/genryu/content/gen001.html

 

 

東京から1時間半で行ける多摩川の源流部

 

東京の桜が葉桜に変わった4月中旬の朝。BE EARTH-FRIENDLY源流探検部は、新宿駅発の特急あずさ2号に乗って山梨県境を目指した。大月駅から車に乗り換えて山道を進むと、満開の桜があちこちで出迎えてくれる。

 

国土交通省によると、日本には一級河川だけでも1万3,994あり、二級河川は7,090、それ以外に1万4,314もの河川があるそうだ。日本各地にある川は身近な自然と言えるが、その川がいったいどこから流れ出て来ているのか、意識する機会はほとんどないだろう。

 

見慣れているはずの川、その源流地域には、どんな景色が広がっているのだろう…。そんな好奇心から、「源流探検部」が誕生した。源流地域を訪ねてその魅力を探ろう、せっかくなら年間を通して源流を歩いて、季節ごとの風景を見て感じてみよう! 考えるだけでワクワクするようなミニプロジェクトの最初の試みは、山梨県にある小菅村。この人口730名の小菅村に流れるのが、多摩川の源流部である小菅川なのだ。

 

その小菅村で源流探検部を待っていてくれたのは、小菅村役場 源流振興課の中川徹さんと、源流の村づくり推進室の青栁慶一さん。

 

お二人の案内で、さっそく源流探検がスタート。まだ新芽も出ていない冬木立の隙間を縫うように続く道を、木の根や点在する石に足を取られないよう気を配りながら渓谷の小路を進む。アップダウンの川沿い路をしばらく歩くと、清流の音が聞こえて来た。木々の間から足元を覗き込むと、澄んだ水の流れ、小菅川だ。




山を知り尽くした小菅村役場の中川徹さんと青栁慶一さんの案内で、源流探検へ出発!




枯葉が積もったふかふかの斜面をロープにつかまって降りていくと、やっと源流の流れにたどり着く。源流探検部の中でもアウトドア初心者のメンバーの足は、すでにガクガク状態、不思議と力が入らない。でも、そんな小さな苦労は、きれいな川を前に吹き飛ぶ思い・・・。

 

石の上を滑るように流れた水は、大きな岩にぶつかって純白のしぶきを上げ、流れが穏やかな水面は、春の日差しを受けてキラキラ光るクリスタルのよう。




起伏のある山道を15分ほど歩いて辿り着いた小菅川の上流部。多摩川の源流部でもある。







川原に立つ木の根から水が染み出していた。 この水が沢となって川に注ぎ、川は下流に向け少しずつ太くなっていく。




「今日はちょっと水量が少ないですね。川は小さな沢が集まって、少しずつ大きくなっていくんです」

中川さんは、幅5mほどの清流の対岸にある大きな木を指差した。

「あの木の根あたりからも、じわじわと水が染み出しているんですよ」

冬の気配が残る山は静まり返っていルが、目をこらすと自然の息吹から春を感じることができる。

「小菅村上流部はヤマメが卵を産むポイントなんです。夏になると、稚魚が遊んでいる姿が見えます」

中川さんが、持ち上げた岸際の川底の小石を裏返して見せてくれた。

「カゲロウの子供です。これが大きくなると、ヤマメの餌になるんです」

覗き込むと、体長5ミリほどのカゲロウの子(幼虫)が石の裏側にへばりついている。

 

 

源流部は村の宝、東京の水がめ。みんなのためにきれいに

 

村では、この小菅川や村のあちこちにある沢の水を使って、川魚の養殖やわさびの栽培が行われてきた。特に、わさびはこんにゃくとともに昔から村の経済を支えてきた特産品なのだと言う。山村の自然を活かした知恵なのかもしれない。

 

この小菅川、その流れに注ぐいくつも沢は、まさに村の宝。しかし、地元の人々がその宝を大切に守ってきたのは、単に村のためだけではないらしい。




民間では初となるヤマメの人工孵化に成功した小菅村では、川の水を使った川魚の養殖が盛んに行われている。






沢を利用した地沢式という方法で栽培されているわさび。ちょうど可憐な花を咲かせていた。



東京で生まれ育ち、小菅村に移住したという中川さんは、村に来た当初、あることに驚いたそうだ。

「村の人々が『シモノシに迷惑かけられないからな』と口々に言うんです。シモノシとは川の下流に住んでいる人たちのこと。この土地では昔から、『下流に住んでいる人に汚れた水を流してはいけない』という思いで自然を守って来たんです」

 

上流に住む人たちが、そこまでの思いを持って「水を守ってくれているなんて!」、中川さんの話に驚く源流探検部。すると、そんな源流探検部の反応に驚いた顔を見せたのが、地元で生まれ育った青栁さん。

 

「下流の人のことを考えて自然を守ることは、上流に位置する小菅村で暮らす住人には普通のことだと思っていました。僕が小さい頃から、村では村民総参加のクリーン作戦も行われていましたし。多摩川水系は東京都の大切な水がめです。だからこそ、源流域をきれいにしないといけませんよね」




東京都から、県堺の小菅村(山梨県)に移住した小菅村役場 源流振興課の中川徹さん。







小菅村で生まれ育った小菅村役場 源流の村づくり推進室の青栁慶一さん




 

当然のこととして水を守って来た小菅村では、昭和63年に下水処理施設を完備し、下水道処理人口普及率100%を達成しています。国土交通省によると、平成27年度末の国内の下水道処理人口普及率は77.8%。下水道の普及率が高い都市部に比べ、小さな地方自治体ではまだまだ下水道が整備されていない地域が多くある。そんな中、人口730人の自治体で100%というのは、驚異的な数字と言えるだろう。

 

村では源流部を守るため、下水道整備以外にもさまざまな取り組みを行っている。例えば、東京都の支援や企業のスポンサードを受けて森づくりをしたり、東京農業大学とともに人材教育プログラム「多摩川源流大学」を立ち上げて源流部の自然や暮らしを体験できる学びの場を提供したり。さらに、小菅村で採水した天然のミネラルウォーターを「多摩源流水」として販売し、1本につき10円を「源流の森再生基金」として源流を守る活動に役立てている。

 

「源流部は村のシンボルのようなもの。今も村では畑の野菜を洗う時、昔ながらの沢の水や湧き水を使っている人が多いんですね。沢の水って、夏でも冷たくて気持ちいいんです。これからの季節は、珍しいカエルや魚が元気に泳ぐ姿が見られるから、源流遊びがもっと楽しめますよ」




水源林の中を走る小菅川。これからの季節は、川の中や周囲に棲む生き物と出会うこともできる。多くの人に源流を見て体感して欲しい。




 

車に戻ると、朝から心配していた雨が降り始めた。こうして一雨ごとに暖かくなり、まもなくに「山笑う」のどかな春景色が広がるはず。そんな季節ごとに変わる景色を楽しみに、源流探検部はこれから毎月、多摩川の源流地域である小菅村を訪れる予定。源流地域の魅力とその源流部を守ることの大切さを広く知ってもらうために、さらにディープに源流部を探検していこうと思う。

 

<次の記事> 第2回 多摩川の水源を守る小菅村の山を歩く

 

<参考資料>

 

<元記事>

多摩川の水を守る山村の活動、山梨県小菅村を訪ねて|DAIWA BE EARTH FRIENDLY -Web site


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    BE EARTH-FRIENDLY源流探検部

    源流の里 小菅村を訪ねて。

    詳しくはこちらから。http://www.daiwa.com/jp/fishing/information/1192706_4340.html