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源流人(げんりゅうのひと)シリーズ 第3弾 ~里山から世界へ NPO法人ピースフィールドジャパン村橋真理さんにきく~

2018/03/27ライター:寺田寛

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源流人(げんりゅうのひと)シリーズでは、毎回源流の里小菅村にかかわる様々な方を取り上げ、そのイキイキとした姿をインタビュー形式で特集していきます。

 

今回取り上げるのは、NPO法人ピースフィールドジャパン(PFJ)で理事をされている村橋真理さん。毎年夏にイスラエル・パレスチナ・日本の若者を対象にした「” KIZUNAプロジェクト」を開催し、2週間弱「里山のくらし」にふれてもらいながら彼らにこれからの社会を一緒に考えていく場を提供しています。


2週間里山で暮らすグローバルな参加者たち



9,000km以上の距離を超えて集まる若者たちが、このちっぽけな山村「小菅村」でいったい何を発見していくのか。

近年「留学」に「インバウンド」と何かと国際化が騒がれている日本ですが、そんな今だからこそ伝えたい、「里山発、世界を拡げていく次世代の人づくり」がそこにはありました。

 

里山から世界へ


里山から世界へ



” KIZUNAプロジェクト」では、イスラエル・パレスチナ・日本から各4名ずつの若者が参加し、東京都内や山梨県北杜市、そして小菅村で共に約2週間様々な経験をしていきます。

運営するのはPFJのスタッフと学生ボランティア。なんとすでに10年以上継続している事業です。

小菅村では里山散策やそばうち、源流体験や地域のお祭りへの参加など2週間どっぷりと小菅村に浸かる体験をしています。


日本の源流を体感!

小菅村に来てまずそばの種を蒔き、帰るころには芽が出ています



まずは、PFJの活動について聞かせてください。

「イスラエルとパレスチナという、紛争状態にあって普段コミュニケーションがとれない若者たちが、持続可能な平和な社会の実現のために、実際に会って話をする場を提供するというのがそもそもの大きな目的です。」


運営は学生スタッフが主体。一生懸命里山の暮らしを伝えます



「ただこのプログラムは、イスラエル・パレスチナ・日本から各4名ずつ12人の参加者とそれに関わる学生ボランティアが、合宿生活をしながら一緒に里山を体験して持続可能な社会のあり方を考えるという小さいプログラムなんですね。

 

なので、最近は「イスラエル、パレスチナが」ではなく、12人の若者たちの個性が集まる場であり、そこに学生ボランティアも一緒になって、村の人たちから教わり、お互いに学び合う場になればと思っています。若者たちが何か、その後のそれぞれの人生、あるいは地域、広く社会について新たな視点を得て、持続可能な社会づくりに貢献する人になってくれるという、ある意味「人づくりプログラム」なのかなと思ってきているところです。」


学生たちの活動を見守る村橋さん



 

偶然が運ぶ、小菅村との出会い

 

小菅村との出会いは何だったんですか?

「もともと小菅村と出会う前は、イスラエル・パレスチナ・日本の子どもたちの親善サッカーイベントから始まりました。

 

それから3者の交流事業として色々な取り組みを行っていましたが、2006年に現地の政治情勢が悪化したため見合わせて、2007年に仕切り直しと言うことになりました。

そのときちょうど小菅村におばあさんがいるという学生がボランティアとして関わってくれていて村を紹介してくれたというのがきっかけです。

 

小菅村役場と「2週間何ができるか」という相談をさせていただいて、源流での自然体験や山登り、畑の体験、林業廃棄物施設の見学など様々な体験ができると教えていただき、「じゃあぜひ」ということで始まりました。

 

その時の参加者がとても良い経験になったということで、それから続けさせていただいています。その一年目のパレスチナ人参加者の一人が今年引率者として来日してくれましたね。彼女にとっては、その時の体験が今のキャリアの原点になっています。」


滞在中の生ごみを自らの手で投入!



「ちなみに最初は違うプロジェクト名だったのですが、その時の日本人参加者の一人が「自分といろいろなものとの『きずな』を見つけることができた」と言ってくれて今の「キズナプロジェクト」になりました。」

最初は「キズナ」ではなかったんですね!

 

「最初は『平和』が前面に出ていました。今も大きな意味ではそうですが、むしろ、『里山』と言う言葉を使ってます。

何年も小菅村とのご縁を頂いたおかげで、里山での体験と学びが、国に関係なく世界の様々な地域の若者たちが将来の社会のあり方を考えるきっかけにつながることが見えてきて、里山をキーワードにするようになったんです。」

 

プロジェクトに参加するそれぞれの参加者ってどういう人たちなのか教えてくれますか。

 

「日本人は公募していて、7080くらいの東京近郊の大学や高校に電話をかけたりポスターを掲示させたりさせてもらっています。

 

ですがあまり来ないので(笑)いろいろつてで声をかけたりしています。「国際」というところから入る子もいれば、里山、日本の田舎の文脈から入る子の二種類いますね。グローバルに関心の高かった子が、参加者したことで日本の文化や価値観、地域にも関心をもつようになったりしています。

 

イスラエル・パレスチナの方は、現地で活動を行っている環境団体がそのユースの活動に参加している高校生に募集をかけ、その推薦の元に書類選考や面接を経て参加している子たちです。」


様々な想いを抱いて小菅村に訪れる参加者たち。2週間で様々なドラマがあります。



 

ありのままのくらしが「価値」になる

 

きっかけは小菅村出身の子だったとのお話しでしたが、やっぱり気になるのは「なぜ小菅村?」ということ。村橋さんから見た小菅村の良さってありますか?

 

「私も以前は小菅村を知らなかったんですけれども、通わせていただく中で、いろいろな発見がありました。

 

まず一つは「小菅村の人のくらしそのもの」

それが外の人にとってはすごく学びになる。村の人は当たり前と言いますけど、私たちにとってはとても価値がある学びになる。今どきの環境で育ってきた子たちにとっては、ある意味衝撃的なんですね。」


村の方々からぞうり編みを学ぶ



「イスラエル・パレスチナの子たちにとっては当然、文化も環境も違うし、緑に囲まれ、静かで、村の人たちが村を愛し、自然も人も大切にしながら暮らしている、本当におとぎ話のようなところと映ります。

また日本の子たちにとっても、「あ、これが本当の日本なんだな」という文化的な気づきがあります。

 

自然がいっぱいの場所が醸し出す優しさとか許容力と言うか、そういうところだからこそ、心穏やかに過ごせ、安心して心を開くことができる。全く普段の日常と違うところに行くからこその気持ち的な大きな変化があると思います。

そして、その自然を知り尽くし、心をこめて野菜を育て、なんでも自分で作れて、知恵や技を持っている村の人はスーパーマンとなります。その「暮らし方」「生き方」に驚き、「自分の人生を変える学びになった」と言うようになります。」

 


村の方々から農作業を学ぶ



「二つ目は、村のみなさんがおっしゃる「小菅村は上流地域だから」という取り組みの姿勢や努力の仕方を学べること。

それらを通して、自分にも、自分の地域や社会に貢献できることがあるのではないかと考えるようになります。

 

 最初は「里山」と言う言葉を使っていませんでしたが、最近はプログラムのコンセプトとして「里山」を打ち出すようになりました。


源流体験で川の大切さを学ぶ



「持続可能な社会のモデルである里山。

小菅村の人たちは「里山」ということを特に意識したりはしていないと思いますが、あくまで外の人が学ぶためのフレームとしてはいいのかなと思っていますし、その事例としての小菅村ということで、この10年で形ができてきているのではと思っています。」

 

確かに、小菅村の人が「里山を守ろう」とか「持続可能性」と声高に言っているわけではないですが、その自然な姿勢がまた学びになるんですね。

でも最初から「里山」とかの形があったというよりは、小菅村でのかかわりや活動を通じて今のコンセプトが育まれてきたんですね。

 

「そうですね。最初は「平和構築」が大きな目的で、歴史的接点が薄いために、双方が受け入れやすい日本がかかわるということだったのですが、今は「SATOYAMA for Peace」と言う言葉を使っています。

 

日本では「平和構築」というと「なんですか?」となってしまい、国と国の間の政治的な問題など難しいイメージになってしまいます。

そうではなく自然と人が共生する「ピースフル/平和的」な社会という意味で、小菅村という里山で学ばせていただいているということですね。

 

きちんとした人になる』。

 

うまい表現方法が見つからないのですが、若者たちがきちんとした人として社会に出ていって、どんな立場にあっても社会の一員としての自覚や責任をもって、地域や世界全体のことを考えながら、より良い社会にするためにできることをする。

「そういう」若者たちがいることが、ある意味いい社会になることなのかなと、関わってくれる若者たちを見ていて、ここ何年か思うようになりました。

 

「グローカル」という言葉をよく使うのですが、グローバルとローカルの両方の視点で、そして社会の様々なものとの関係を大切にしながら「いい」方向に成長していってもらえたらと思います。

小菅には、若者たちの学びになるいい教材がたくさんあります。


小菅村の「山」「森」が抱える課題を学ぶ



里山から世界へ、想いを持つ若者たちが羽ばたいていく場所

 

こういうことって、一つの言葉にしようとすると難しいですね。それに安易にありがちな言葉にしてしまうのも、もったいない気がします。

「そうですね。

卒業していった子たちもまさに「平和構築」に関わる子たちばかりではないですが、この経験を活かした仕事についていたり、さらにその先の夢を持ったりしています。

 

ある子は住宅メーカーに勤めていますが、「日本の木を使った家を建てたい、いい家を建ててその人たちに幸せに暮らしてほしい」ということを考えて卒業後の進路を決めたそうです。」

「またイスラエル・パレスチナの子たちにとっては、まさに日本=「小菅」なんですよね。参加して何年経っても「こすげこすげ」ってキーワードみたいに使われるくらい強烈みたいです。帰ってから自分の生活を見直した、学校でワークショップを行った、家で堆肥を作るようになった、市長に頼みに行った、など、自発的に行動しています。

 

また、これまでに4人、イスラエルとパレスチナの参加者が、ボランティアスタッフとして小菅に戻ってきています。他の子たちも、いつかは、と考えています。今どきの子たちなのでインターネットでいろいろな知識は得られますが、それで自分の行動を変えるのは難しい。そんな彼女たちの行動に影響を与えるくらい小菅村にはインパクトがあるということですよね。」

 

学生たちもすごい真剣でイキイキしてますよね。

 

「ボランティアの学生たちは、春から8月まで、ほぼ毎週末ミーティングを持ち、参加者たちに小菅で学んでほしいことを念頭に、体験活動を運営するための準備をしています。

学びを提供する立場で取り組まないといけないので大変なのですが、「小菅愛」があるから楽しいと言います。


夏以外でも小菅村を訪れてくれる学生たち



群馬から毎週末東京に出てきて参加してくれている子もいます。日立や千葉、遠くから事務所に通う学生も多く、交通費のためにバイトしていたりして申し訳ないなーと思ったり。

卒業してからも仕事の合間をぬって参加してくれる子もいます。みんな里山に行きたいではなく「小菅に行きたい」なんですね。

村の人に会いたいだったり、おいしい梅酒が飲みたいだったり、おいしい野菜やヤマメが食べたいだったり動機は単純ですけど、ある意味第二の故郷と言うか、実は実家に戻るよりも小菅に来る回数のほうが多い子もいるかもしれません。」

 

続いてくれること

 

今後の展望はどうですか?

 

「今後の展望は、続けること

「組織の展望は?」と聞かれることもあるんですが、「ハッキリ言ってないですよ!続けてこられただけで不思議です。」と(笑)。

組織として強化するためには有給スタッフの雇用や安定した財政となるのでしょうが、現状ではとても難しいです。

一緒に小菅村で体験して学んだ、いろんな形の持続可能性を考える若者たちの緩いネットワークが広がり、深まってくれればという想いはあります。いずれ、その若者たちが、自発的に一緒に何かを始めるきっかけになればいいですね。」

小菅村から、世界に羽ばたく人づくり。毎年夏、未来を担う若者たちの「出会いとドラマ」が個々にはあります。

認定特定非営利活動法人ピースフィールドジャパン

http://www.peace-field.org/

2018年3月現在 2018年度”絆”KIZUNAプロジェクト参加者及び学生ボランティアを募集しています!

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寺田寛

小菅村の魅力を世界に発信すべく、様々なツアーを企画・運営しています。最近の悩みは自分が「雨男」になってきていること。晴れ男になる方法を知っている方はぜひ教えてください!

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