源流の村で日本の縫製業を支える 奥秋縫製/現場責任者 奥秋めぐみさん
2024/07/03 ライター:Ogawa.K
豊かな自然あふれる小菅村の集落ですが意外と製造業も多く存在しています。
今回はその中の1つである、奥秋縫製さんにお話を伺いました。
おばあさまの代から職人さんたちと丁寧な仕事を心がけた結果、今では多くお仕事を受注されており、縫い物や、物をつくることについて関心がある方にぜひお手伝いいただきたいそうです。
村のおばちゃんたちと
1つ1つ製品を仕上げていく
――めぐみさんのお仕事を教えてください。
私自身は縫うことはあまりできないので、発注者のホットマン株式会社さん(以下、ホットマン https://hotman.co.jp )との仕事のやり取り、納品のコントロールをしています。
また、検品前のチェックをする、ボタンホールをあけるなどの作業をしています。
――全体のお仕事の流れはどのようになっているのでしょうか。
まずは、ホットマンさんから裁断された生地が届きます。
エプロン、パジャマ、タオルなど色々な商品が入ってくるので、製品別にスタッフの方達に割り振ります。
――製品別に担当の方がいらっしゃるんですか?
そうですね、担当というよりも、得意な方というイメージです。
タオルを専門で縫う人、パジャマを縫う人、エプロンを縫う人などいろいろいらっしゃいます。
最近はベビー製品も増えてきました。
国内の私たちのような縫製工場が少しずつ減ってきているようで、どちらかというとお仕事は増えていますね。
いくつかの工程があるものについては、たとえばエプロンの紐作りをしたり、シェニールという柄をポケットや胸に使うための下準備などもあります。
その下準備をこちらの1Fでやっています。
ご自宅で縫製をされる方もいらっしゃいますし、ミシンを自宅に置けない方はここ(工場)の2Fでもお仕事をできるようになっています。
基本的に縫製の指示は、指示書があるのでそれに基づいて行うのですが、わからない点などについては、ずっとここのお仕事を続けてくださっている方が2階にほとんど常駐くださっているので、その方が教えてくれますよ。
――奥秋縫製さんはどのようにして始まったのでしょうか。
昭和55年くらいに、祖母が始めました。
最初はホットマンさんとは違う会社で、ブラウスとかだったと思います。
その後、ホットマンさんや八王子の方の工場さんの仕事も始めたようです。
が、今はホットマンさんだけで縫製業をやっています。
――40年以上も続いているんですね!当初から相当評判がよかったのでしょうか。
そうみたいです。
とても丁寧な仕事で「奥秋さんのところなら検品しなくても大丈夫」とまで言われていたようです。
当時は祖母が指導していて、さらに村の中の方も経験がある方が多かったので、作業はとても上手、綺麗で、早かったようです。
今は、昔からの方が平均して75歳くらいになっているので、若い方に縫製技術をどんどん覚えていってほしいと思っているのですが、なかなか若いメンバーが増えないことが悩みのタネです。
興味があるからと、ちょっと見学に来てボタン付けを覚えてくれたりした人もいますし、すきま時間に検品を手伝ってくれる人もいます。
そんなふうに、少しずつでも周りのことを手伝ってくれる人が増えれば縫製に集中したい方はもっと縫製に集中できるし、色々な働き方をできるようになるのではないかなと思っています。
自分たちがつくったものが、
お客様に届いて喜ばれる幸せ
――何人くらいの方が働いているのですか。
配達の方も含めると23人。
ここの工場だけで11人です。
ほとんどは村内の方なのですが、大月や丹波の方もいらっしゃいます。
縫製のための布を取りにきてもらわなければいけないので、取りにきて完成物を届けにきてくださるのであれば働く場所は問いません。
――そのくらい多くの方が代替わりも含めて働いていらして、注文も増えているというのは良いモノづくりが続いている証拠だと思います。
どんなことを心がけていますか。
祖母が実際になんて言っていたかわからないけれど、人が使って心地よいもの、お客様に美しく見えること、そして喜んでもらえたらという思いで作っているんだと思います。
あと、「仕事だからちゃんとやらないと」っていう意識はみんなあるはずです。
私自身は縫製もできないし、工程もよくわかっていないので、伝えられることはないんですけど、ここにいる縫製の先輩たちが後輩に教えてくれているんだと思います。
そのくらい、ものづくりの質から人間関係まで祖母が作り上げてくれていたし、「モリエさん(祖母)がやるから」って来てくれていた人たちもいたので、祖母が亡くなった時に、皆やめちゃうんじゃないかってすごく心配でした。
でも、その後もみなさん当たり前のように仕事場にきてくださって。
本当にありがたかったです。
――これは大変だったってことありますか。
そうですね、、。それこそ、納期が間に合わないって徹夜したことがあります(笑)
受けたお仕事が想定よりも多くなって、おばちゃんたちの縫製が間に合わなかったんですね。
3種類のワンピースにそれぞれ3色ずつあって。
なので9種類ですか。
結構いっぱいいっぱいだったんです。
その時は私もフル稼働でした。
なんとか前日までに縫製が間に合って、夜中1人でたたみ続ける、ボタンをつけ続けるみたいなことを。
おばちゃんたちも来てくれて、夜の12時くらいまで手伝ってくれて。
次の日も朝早くから来てくれて。
なんとか午後には納期に間に合わせたんです。
1週間くらいまえに、間に合わないかもなという話はでていたんですけど、「なんとかなるかな」と思ってしまって。
私の優柔不断なところが出てしまいました。
それ以降は、目一杯になりそうな仕事量は受けないようにして、早めの対応を心がけているつもりです。
――お仕事の中で嬉しかったことはありますか。
そうですね。
私自身が縫うことはないので、作り手としてという感想はあまり持てないかも知れないですが。
村に来てくださった方が「いいな」と思ってタオルを買ってくれていったり、ふるさと納税で出しているタオルも褒められることが多いみたいなんです。
ホットマンさんのカタログを見ていると、「あ、これも、これもうちで作ってる!」って思うものが多くて。
ちょっと嬉しくなります。
――今後こうしていきたいということはありますか。
早いところ、縫製をやってくださる方を増やしたいですし、育てたいです。
5年後には、おばちゃんたちも80になってしまうから。
女の人が多いですが、男性でももちろん大歓迎です。
みんな和気あいあいとやってます。
会社の従業員というものではなく、お仕事を委託するかたちになるので、時間にしばられず働けるのはやりやすいと思います。
もちろん、副業としてもやっていただけますし。
――応募を検討されている方にメッセージはありますか。
少しでも興味があったら見学にいらしてください。
皆楽しくやっているので、足を運んでいただけたら嬉しいです。
●奥秋縫製さんでお仕事をしてみたいと思われた方は以下にご連絡ください。
電話:0428-87-0822
Email:okuaki.hosei@gmail.com(@を英字の@に変えてお送りください)
※ご返信までにお時間をいただく場合がございます。
Ogawa.K
東京多摩生まれ多摩育ち。幼少期から多摩、奥多摩の山々と親しむ。初の小菅村訪問は齢2歳だったそう。
仕事で小菅村に関わるようになり、すっかりと虜になりました。小菅村の一番好きな時期は春の芽吹きのころ。