薪ボイラーで温泉も村もポカポカ!小菅の湯と源流の森に生まれた循環とは?
2025/06/03 ライター:山下春奈
多摩源流温泉小菅の湯では、2022年に薪ボイラーが導入されました。
高アルカリ性で「美人の湯」と呼ばれる小菅の湯は、村の薪で温められています。
「薪でお風呂を沸かすと、体の芯から温まる」と言われる薪ボイラー。
体への効果だけではなく、薪ボイラーの導入により、光熱費や二酸化炭素(CO2)が削減されました。
その成果が評価され、令和6年度には一般財団法人新エネルギー財団主催の「新エネ大賞」にて新エネルギー財団会長賞を受賞しました。
体を温めるだけではなく、地域活性化に様々な効果をもたらす薪ボイラー。詳しくご紹介します!
小菅の湯が薪ボイラーを導入。その背景とは。
小菅村は多摩川の源流域に位置し、村の約95%が森林に囲まれています。

様々な恵みをもたらす源流
森林は、雨水を貯め、土砂流出を防ぎ、水質を浄化する機能を持っています。
この機能をもった森林のことを「水源かん養林」と言います。
多摩川を守るためには、水源かん養林を守る必要があり、小菅村では昔から「源流を守る」ことを意識した暮らしをしてきました。
ですが、高齢化や人手不足により人工林の手入れが行き届かず、森林の荒廃が進んでいます。

人の手入れが行き届かなくなった森
水源地の森林整備ができ、さらに森林を健康に保つために間引かれる木材(=間伐材)などを活用するにはどうしたらよいのか、と頭を悩ませていました。
そこで、解決策として小菅の湯への「薪ボイラー」導入が検討され、2018年から調査が始まりました。
小菅の湯に薪ボイラーを導入するためには、実際に導入することでどのような経済効果があるのか、安定して薪を供給するためにはどのような仕組みづくりをするべきなのか等、様々な調査が行われました。
そして、2022年に薪ボイラーの機械が設置され、運用が開始されました。

薪ボイラー稼働1日目。舩木直美小菅村長と記念写真。
地域の森を活かす!村に生まれた新しい循環。
「源流の森を守る」ために導入された薪ボイラーは、いったいどのような流れで温泉を温めているのでしょうか。
薪が製造されるまでの流れを写真で見ていきます。
➀まずは、森林組合や林業会社または山林を所有している村民によって、森から原木が運ばれてきます。
➁村内にある、薪製造所で原木を買い取ります。山林所有者から5,000円/m3で購入をしています。
➂原木を薪にするための加工を行います。
④ラックにつめ、乾燥させます。
薪ボイラーとして利用するのに、1番気をつけなければいけないのが水分量です。
数ヶ月かけて水分量を75%以下まで乾燥させないと、燃えにくく温泉がぬるくなってしまうそうです。

これが1立方メートル(1ラック)
1ラックの薪を製造するには、森で伐採する人、搬出する人、薪製造をする人と、多くの人が関わっています。
薪ボイラーを導入したことにより、間伐材が活用されるだけでなく、村に新たな雇用が生まれ村の活性化にも繋がっています。
薪ボイラーの仕組みともたらした効果とは?
製造された薪がどのようにして温泉を温めているのか、小菅の湯支配人の村上さんの作業に密着してみました!
小菅の湯の営業時間は10時~18時(受付終了17時20分)です。
温泉を温めるために、朝は7時から薪ボイラーを稼働させます。
そして営業終了までに、4~5回薪を入れています。
➀まず温泉を温めるために、薪ボイラーや薪が置いてある場所へ向かいます。
➁薪ボイラーは2台設置されています。ドイツ製のものです。
➂薪を投入!薪の香りと熱気を感じます。
④冬場は2ラック+灯油ボイラー、夏場は1.5~2ラック使用します。
木は間伐材でスギ・ヒノキが大半です。近くに寄るとヒノキのいい香り…
⑤よく乾燥した薪を燃やしていきます。
⑥薪が燃え、出た灰は村内の家庭ででた生ごみを堆肥にする「林廃処理施設」に持っていきます。
灰によって、生ごみにハエなどの虫が寄ってこなくなります。
⑦薪ボイラーで沸かしたお湯をためている蓄熱槽です。
この蓄熱槽があることによって、温泉の温度を調節することができます!
これまでは灯油を燃料とするヒートポンプ式と電力で加温していましたが、薪で加温することによって、光熱費が46%の削減となりました。
また、地球温暖化の原因にもなる、二酸化炭素(CO2)を平均100t‐CO2/年削減しています。
これは50世帯の1年分のCO2排出量に相当するとのこと!
地域資源を活かした取り組みが、地球温暖化を防ぎ、持続可能な未来に繋がっています。
新エネルギー財団会長賞を受賞!
村内の間伐材を利用していることや、地域経済や森林整備に貢献する活動であることが認められ、令和6年度の新エネ大賞「新エネルギー財団長官賞」を受賞しました。

表彰式時の写真(中央は舩木直美小菅村長)
また、CO2排出量の実質ゼロを目的とした地球温暖化防止に関する地域活動について、優れた取組を表彰している「脱炭素チャレンジカップ」では「奨励賞」を受賞しました。

「脱炭素チャレンジカップ」受賞の様子
多くの方が訪れ癒される「多摩源流小菅の湯」・多摩川源流の「森」・そして小菅村で暮らしたり訪れる「人」。
地域にも森にもいい循環が生まれ、源流の森と共に生きていることを実感するきっかけとなりました。
薪ボイラー導入により、小菅村に様々な効果をもたらしていました。
高アルカリ性で「美人の湯」と呼ばれている小菅の湯で、森の循環を感じながら、ゆっくり温まりませんか?
ぜひお待ちしております!

山下春奈
2024年3月に地域おこし協力隊を卒業し、引き続き村で暮らしています。
小さな村の濃厚で賑やかで豊かな暮らしを発信していきます!