おいしいだけじゃない!獣害対策にも役立つ?!高級スイーツができるまで。
2018/01/16 ライター:青栁やすは
自然豊かな小菅村。
豊かな森には、そこに住む野生生物もたくさんいます。
シカやイノシシ、クマ、サル、テン、ハクビシン、アナグマ…とまだまだいます。
一見するとのどかな風景に思えますが、近年これらの野生動物が畑を荒らすといった「獣害(じゅうがい)」が深刻化しているんです。
寒い季節になると、畑から農作物がなくなります。
獣(けもの)たちのターゲットは、小菅村に多くある柿に!
高齢者には収穫が大変な、里に放置されている柿の木が狙われます。
獣害を食い止めるために、若者は立ち上がった…!
山で暮らしていた野生生物が、畑や民家といった人が暮らす里まで来て、人の生活に害を及ぼす現状を何とかしたいと、立ち上がったのが青栁博樹(ひろき)さん。
普段は、有害獣の捕獲やジビエ販売を仕事としています。
この時期は、クマやサルなどの野生生物が里に下りてくるのを防ぐ「獣害対策」をかねて、柿の収穫をしているそう。
所有者が高齢のため収穫できない柿を、代わりに収穫するお手伝いを、あちこちでしています。
そんな柿採りのプロの博樹さんと一緒に、手間ひまかかる冬の風物詩作りを体験しました。
いざ柿の収穫に!!
あっという間に、5mほどある高い木に登る博樹さん。
これは、高齢者には大変な仕事です。
しかも、柿の木は折れやすいそう。
細心の注意が必要です。
柿の木に登ったら、竹竿で柿を収穫していきます。
落としてしまうと、柿が割れて使い物にならないので、慎重に行います。
この収穫に使う竹竿は、とってもシンプルな道具です。
斜めにカットされた先端に、切り込みが入っているだけ。
この切込み部分に枝をかませ、竹竿をひねって枝を折って収穫をします。
2~5mの竹竿を、収穫する場所によって変えて使います。
写真は一番長い5mの竹竿です。
柿の収穫にチャレンジ!!
どんどん柿を収穫し、カゴに入れていく博樹さん。
そんなに難しくなさそうなのか?
チャレンジしてみました。
木に登るのは大変なので、平地でのチャレンジ。
使ったのは一番長い約5mの竹竿です。
…
……
…………
竿に枝がなかなか刺さりません!
5m先の枝を見上げると、どの枝に柿が付いているのか見分けるのが難しいのです。
木は違いますが、こんな感じに見えます。
そして、見上げる首も痛いし、竿も重い!
今回使った5メートルの竹竿は、竿の重さだけで1.8Kgあるのです。
そのため、目標を定めるのにも一苦労です。
竹竿をひねって枝を折るのは、意外とすんなりできました。
枝がパキッと折れるので、気持ちいいです。
遠くて全く伝わりませんが、長い竿の先に500gの柿。
5メートルの竹竿では5倍の重さがかかるため、500gの柿でも、2.5kg相当の重さが腕にのしかかってきます!
加えて、竿の重さもあります。
これを慎重に降ろさなければなりません。
柿を放り投げたい気持ちを抑え、腕の筋肉をフル稼働しています。
ハードな作業です!
ちなみに小菅村にある柿の木は、全て渋柿(しぶがき)。
そのままでは食べられません。
甘柿(あまがき)の品種を植えても、渋くなるそう。
不思議ですね。
干し柿づくり
そのままでは渋くて食べられない、渋柿。
干すことで甘くて、保存食ともなる「干し柿」に加工されます。
包丁とピーラーを使って皮をむきます。
皮をむいた柿は、さっと湯通し。
こうすることで表面が乾きやすくなり、カビにくくなるそう。
T字に切った枝にひもに吊るしたら、干していきます。
雨が当たらず、日当たりと風通しの良い所に。
この時期に雨が続いたり、暖かい日が続いたりすると、柿が乾かずにカビてしまいます。
天候との戦いとなります。
美味しい干し柿ができるまで、約1か月間干します。
まんべんなく乾くよう、何度もやさしく揉みます。
もちろん、その間に鳥や獣に食べられない工夫も必要です。
いい感じに乾いてきた干し柿を、深夜にガサガサと狙う音が!
氷点下の寒空の下、慌てて追い払い、罠を仕掛けたら…?
犯人はテンでした。
かわいい顔をしていますが、小さな体と強い手足で、狭い場所や高い所に登って、農作物を荒らしたりする、厄介者です。
獣に天候にと、完成するまで気が抜けません。
完成まで、とっても手間ひまがかかるんですね。
高級スイーツ「干し柿」の完成
あの渋かった柿が、とーっても甘い干し柿に大変身。
大きさも半分以下まで小さくなって、うまみが凝縮されています。
和菓子の甘さは、干し柿の甘さが基準にされるほど、上品な甘さとされています。
つまり、羊羹と干し柿の糖度は同じくらい。
砂糖も使っていないのに、自然の力で甘くなるので驚きです。
手間ひまかけて作られた、高級スイーツ「干し柿」。
小菅村の干し柿は、美味しいことはもちろん、獣害対策の役にも立っているので、ぜひ買って、その活動を応援したいですね。
青栁やすは
愛知県から小菅村に嫁ぎ、3人の子育てをしています。保育所の体育講師をしながら、小菅村の伝統工芸の「きおび」を使って、作品作りをしています。村に来る前は、環境教育に携わる仕事をしていました。小菅村でのスローライフを研究中。Instagramはこちら