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元気でおいしい魚を届けたい。源流をいかした養魚場 小菅養魚場/古菅一芳さん

2023/10/16 ライター:松井みほ子

 

日本で、民間では初めてヤマメの完全養殖に成功した小菅村。

清らかな源流をいかした養魚場でいきいきと育ったヤマメは、村の名物のひとつでもあります。

50年以上養殖の仕事を続け、ヤマメをはじめ、人気のブランド魚を、県内のレストランや釣り場へ卸している小菅養魚場の古菅一芳さんに、どのように魚を育てているのか、話を聞きました。

 

自然の力を借りながら

3年かけて育て上げる

 

――こちらで育てている魚について教えてください。

 

私は、昭和40年頃からニジマス、次にヤマメを養殖していて、現在はイワナやアマゴも養殖しています。

10年くらい前から山梨県のブランド魚として作り始めたのが甲斐サーモンです。

赤身で50センチ以上の大型の魚で、それが美味しいと評判になり、山梨県の名産品でもある葡萄の皮を粉末にして餌に入れ込んだ甲斐サーモンレッドが生まれました。

さらに、令和2年頃からは、県の開発した富士の介というキングサーモンとニジマスと交配した魚を売り始めました。

山梨県のホテルや旅館では富士の介を刺身で提供しています。

おかげさまで、人気が抜群ですよ。

村内のお店の場合は事前に電話で注文いただいたら冷凍もせず配達するのがだいたい片道5分くらいですから、本当に新鮮です。


小菅村で食べられる新鮮な川魚の刺身は格別(富士の介、イワナ、甲斐サーモンレッド)


――普段はどんなお仕事されているんでしょうか。

 

朝起きたらきれいな水が溜まっているか、魚が元気に泳いでいるかを確認して、そして餌をやってね。

餌の量は水温や魚の量、大きさによって変えています。

あとは、水がきれいに循環するようにそうじをしたり…。

そうやって3年ほどかけて魚を育てるんですね。

養殖って地下水や湧水を使えば冬でも温かいので丸2年ほどで大きくなるんですけど、この源流域の水は春夏秋冬の水温の変化があって一年中安定して育つというわけにはいかず丸3年は飼わないと出荷サイズになりません。

手間暇かかるけれどプラス面もあって、肉質がしまって美味しい。

また釣りに使っても引きが強くて元気な魚になるんです。


餌やりのようす。古菅さんが餌をまくと、魚たちが元気にとびはねる


――お仕事上で大変な部分や何か気をつけていることはありますか?

 

台風など、大雨があると土砂が流れてきて水がせきとめられてしまうことがあるんです。

魚は基本的に新しい水がどんどん入って、水中に酸素が十分にないと30分ほどで死に始めてしまいます。

水車を池に置いているのは空気中の酸素を取り入れているためなんですね。

だから雨が降れば夜も寝ないで管理をするとか、そういう大変さはありますよね。

源流域でこういう自然の川の水を使って養殖していると、それも宿命だと受け止めています。


水中に酸素をとりいれるための水車


――仕事をする上でやりがいを感じるのはどういう時ですか?

 

それは順調に魚が大きくなって、お客さんの希望に応えられる魚ができれば、当然、お客さんの反応でおいしいという話が伝わりますからね。

そういうのはもちろん嬉しいです。

あとは元気な魚を納品できれば間違いなくお客さんが喜んでくれる。

それでやりがいはもちろん感じます。


2~3㎝のサイズの稚魚から出荷できる50㎝ほどのサイズになるまで3年かかる


おいしくて元気な魚を

育て続ける

 

――そもそも古菅さんがこの仕事を始めた理由を教えてください。

 

昭和27年の7月に父親がこの養魚場をはじめました。

ほかに畑や水田、精米所や美容院も経営していたんです。

後を継がず他の道もあったんですけど、自分の性格からして企業で働くよりも自分の責任でやった方がいいのかな、と思いました。

そのなかで、これからどうするかを考えると結局、将来性があるかどうかが重要ではないかと。

奥多摩近辺にはニジマスを使った釣り場があって、戦後GHQの駐留していた人たちのレジャーとしてニジマス釣りは人気があったんです。

釣り場にお客さんがいっぱい来てバーベキューなんかで繁盛してるのを自分でも見たことがあって、これは廃れることはなさそうだと思って選びました。

自分でやりはじめて、どうやって多くの人に知ってもらうかを悩んでいた時に、知人の新聞記者の方に相談したら、記者の皆さんを招待したらどうかとアドバイスをいただきました。

もう素人だから半信半疑だったけどね。

招待状を書いて新聞社にお願いして回って。

そうしたら、大きく新聞の紙面に掲載されて、びっくりしたね。

その後は役場の電話も釣り場の電話も鳴りっぱなし。

宿泊客がどのくらい増えたか、計算したら一変に2万人増えました。

そのうち今度はテレビも来てくれて。本当にありがたいですね。


釣りが楽しめる養魚場近くの「小菅トラウトガーデン」も多くの観光客が訪れる人気スポット


――小菅村の良いところを教えてください。

 

自然がいっぱいあって空気がきれい、水がおいしい。

同じ真夏で暑い時でも風が爽やかですよね。

大きくない村だけど、外から来た人は受け入れる空気があります。

村の将来を考えれば、小菅を気に入ったらぜひ住んでもらいたいですし、仕事に来てもらったりとか、もちろん、観光で来てもらったりすると嬉しいですね。


周辺は美しい山に囲まれた気持ちのいい環境


――今後の仕事での目標とか展望はありますか?

 

おいしい魚を作る、元気のいい魚を作る。

それが一番基本なんだけれどやっぱり徹底してやるのが重要だと思っています。

今、これまでにない物価上昇で大変な部分もあるけど、基本を守れば乗り切ることができるのではないかと。

うちは父も祖父も88歳まで生きたんですよね。

長生きの家系だから、生きているうちは仕事を続けたいですね。

 

こんなことをお手伝いしてください!

 

・魚の餌やり

・水槽の落ち葉などのそうじ

・慣れてくれば魚の選別も

 

 

こんな人待ってます!

 

・性別や年齢も問いません

・生き物をあつかうので、まじめに取り組んでくださる方歓迎します

 

 

古菅さんよりメッセージ

 

餌やりはちょっと習えばできます。

1日、2日でどんな仕事なのかわかりますし、例えば週末だけ来てもらうのもOKです。

やる気があれば、そんなに難しいことはありませんので安心してください。


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    松井みほ子

    出版社や編集プロダクションにてファッション、フード、アニメなどなど幅広いジャンルで、雑誌やWEBの制作をしていました。

    現在はフリーランスで編集・ライターとして活動。小菅村の温泉とビール大好きです!