小菅村の暮らしと共に生き、小菅村を伝えるお宿で働く 廣瀬屋旅館/廣瀬晴彦さん
2023/11/13 ライター:Ogawa.K
小菅村で泊まるお宿を探すときには、最初に空室を確認してしまう廣瀬屋旅館。
今回は廣瀬晴彦さんに廣瀬屋旅館のお仕事について、お話を伺いました!
小菅村の食文化を継承する旅館
――まず、お仕事の内容について教えてください。
そうですね、基本的には宿泊に伴うサービス全般というところになると思います。
宿泊をしていただくための客室の準備、調理補助、配膳、その他厨房関連、クリンネス。
そしてあまりアルバイトの方にお願いをすることはないですが、お客様に来ていただくための企画を考えたり、実行したりしています。
調理部分は私の両親が6割、私が4割ですね。
郷土料理は両親、生鮮食材や新しい食材を使った料理を私がやっています。
――宿泊のお客様だけではなくて、お弁当やランチもやっていらっしゃいますよね。
いつも源流弁当の「小菅っぽさ」は素晴らしいなと思っています。
はい、お弁当も出していますね。
源流弁当は村外の方が小菅村の食材を楽しんでいただくというコンセプトで作っています。
料理の内容がより伝わりやすいように弁当箱に献立を貼ってありますが、必要があればさらに追加して補足説明を入れていた時期もあるんですよ。
例えば天然きのこを使った場合、ちょっと写真つけたり、こんなキノコで特徴があって。小菅村での名称はこうですけど、一般にはこう呼ばれているキノコです。とか。
――お宿のご飯もランチも、いつも季節を感じられますものね。
旅館のコンセプトが、小菅村の食文化の継承みたいな、大それたポリシーがありまして。
なので、なるべくこう、郷土的な料理、小菅村で古くから食べているような料理を出すように心掛けています。
全ては、お客さんに喜んでいただくために、
お越しいただくために。
――素敵なポリシーですね。最初からそのような方向で経営していらしたんですか。
私はUターンしてきた人間で、20年ほど前に小菅村に戻ってきたんです。
その頃から企画や料理など新しいものにチャレンジしてました。
宿泊する方はご高齢のお客さんも多かったので、昔ながらのお料理を出すと「わ、子どもの頃よく食べたな」みたいな感じでレスポンスも良くって。
反応が嬉しくて、それに応えていたら、実は若い方にも好評で。
「素朴だけと味わったことのない食材」とか。
若い人にはお肉出さなきゃと思っていたから、反応は意外でしたね。
山梨県の食文化では、甲州ワインビーフ、富士桜ポーク、信玄鶏など肉類も豊富にあるんですよ。
ただ甲府盆地の食文化と山里の食文化ってだいぶ違いますからね。
だから、小菅村の食材にこだわっているというところです。
結局のところ、お客さんに来てもらわなきゃいけないですから。
旅館をやってるだけで生活ができれば理想的なのですが、そういうわけにはいかないのでランチや仕出し弁当、その他にご要望があれば極力対応するようにしています。
お客さんがどんどん来る様な観光地じゃないから働きかけはしていかないと。
――必要性があるとはいえ、小菅村には廣瀬屋旅館ありというところまで持ってこられたのは素晴らしいことだと思います。原動力はなんですか。
サービス業って反応がダイレクトにわかるじゃないですか。
満足してもらえたかなとか。
せっかくこんな山奥まで来ていただいたのであれば、やはり全ての人に満足してもらいたいですよね。
そのためにどうするべきかっていうのは常に頭の中で考えています。
新しいメニューや宿泊プランなどがいつも頭の中にモヤモヤあって、それがある時「ああこういう形だな」とできた案を試す・・・
結果は失敗も多いですが、人気企画になったものもあります。
お客様に満足していただければ私も嬉しい。
最近オープンした「廣瀬屋酒販」(https://r.goope.jp/hiroseyashuhan/)も一年以上前から考えていて、申請書類の準備や建築の関係ですぐに取り掛かれなかったので、その間できた時間でこちらの要望に応えてくれる問屋さんを探したり、酒蔵さんに伺ったり勉強してました。
酒販店では、山梨県内で醸造した酒類だけ販売しています。
ワインもそうですが、日本酒は山梨県で栽培したお米だけ使用したものを揃えました。
小菅村に拠点を持つFar Yeast Brewingさんのクラフトビールも多数揃えており、ワインやクラフトビールは試飲も可能なのでお越しいただいた方に楽しんでもらえればと思ってます。
――お仕事で印象に残っていることありますか。
もう20年以上前の事になりますが、夜中に50人の宿泊準備をしなければいけなくなったことですかね(笑
――どういうことですか・・・?
都内の学校さんの競歩大会が毎年GW期間中ありまして。
夜中に出発して大菩薩峠を越えるという、なかなかハードな内容なんです。
小菅村〜大菩薩峠〜塩山のコースを1年ごとにスタートとゴールを入れ替えて行いますが、その年は小菅村のスタートだったんです。
夜中に生徒を乗せた大型バスが20台以上も来るんですね。
生徒を降ろした後ゴールに向かうはずだった大型バスが大雪で通行止めになってしまって。
で、引き返すので急遽泊めてくれと。
そこから部屋の支度をして、ご飯を炊いて急遽夜食を作って深夜から朝までてんやわんやでした。
その大会の50周年記念パーティーに招待していただきまして、その時の事が思い出深く残っていますというお話をしたら、会場でも良く話題に上がっていましてね。
その時のことは校内でも「赤沢返し」という名称になって呼ばれていて。
――宿としてある以上、受け入れないと という感じでしょうか。
宿って、いろいろな方が来ますよね。
リフレッシュ目的な方もいれば、ご事情をお持ちの方もいれば。
それでも、気持ちよく過ごせたなと感じてもらえればいいなと思っています。
お弁当もそうですし、実は学校の先生方の朝食や夕食もやっているんですよ。
企業の社食みたいな役割も引き受けています。
やっぱり、お願いされるとね。
生きる糧にもなりますし。
そういう意味では、実質ほとんど休みはないですけどね。
オンとオフの切り替えが曖昧な生活をしているので、普通の人と少し感覚が違うなと思う事が時々あります。
――小菅村の魅力はなんですか。
私も小さい頃から小菅村で生活しているので、これ!と感じたことはないんですが、例えば小菅村に向かうとき、奥多摩方面から来ると、まず奥多摩湖がドンと出てきて、この湖まだ続いてるよって大きいなすごいなっていう、ダイナミックさ。
大月側から来ると、全長3kmの松姫トンネル抜けるとドンと小菅村。
壮大な湖や意表を突いた長いトンネルを抜けてたどり着いた小菅村は手に届く自然に囲まれた素朴だけど時代の最先端事業をしていたり「えっ!なんなの?この村!?」と意外な発見が多い事が魅力ではないでしょうか。
――お仕事に来ていただく方に期待することはありますか。
サービスを受けるお客さんの立場になって行動してくださると良いですね。
気配りが大事です。
――お仕事の今後の目標を教えてください。
10月に酒類の小売りを始めましたが、準備が整いましたら店内で角打ち(かくうち。買ったお酒を飲むこと。)を始める予定です。
クラフトビールやワインの試飲会も定期的に行う予定で、それに伴いペアリング料理の販売も計画しているので、惣菜の製造免許を取得予定です。
こんなことをお手伝いしてください!
・旅館での調理補助、配膳、クリンネス
・接客
・その他軽作業
こんな人待ってます!
サービスを受ける側の気持ちになって、楽しく働いてくださる方
老若男女問いません
晴彦さんよりメッセージ
山間での旅館のお仕事、楽しみながらやっていただけると嬉しいです。
●廣瀬屋旅館
Ogawa.K
東京多摩生まれ多摩育ち。幼少期から多摩、奥多摩の山々と親しむ。初の小菅村訪問は齢2歳だったそう。
仕事で小菅村に関わるようになり、すっかりと虜になりました。小菅村の一番好きな時期は春の芽吹きのころ。