NTT東日本が小菅村・村内企業と連携し、LPWAを活用した実証実験の開始を発表!どんな実験なの?小菅村の未来が変わる?!
2020/02/04 ライター:青栁やすは
2020年1月22日にNTT東日本は、
山梨県小菅村・北都留森林組合・(株)boonboon・(株)さとゆめと連携した、実証実験を開始すると報道発表しました。
タイトルがこちら。
山間部のネットワーク化を通じた「林業従事者の労働災害抑止」及び「シカ等の獣害対策」に関する共同実証実験の開始
~人口700人の村で地方創生にIoTを活用。林業の成長産業化から始まる”Smart Village“をめざして~
長い上に、専門用語がいっぱい!
NTTと言えば固定電話やフレッツ光と、私たちの暮らしに欠かせない会社。
今回の記者会見の内容は、一体どういったものなのでしょうか?
小菅村にはこんな課題がありました。
森林面積95%の小菅村。
北都留森林組合を始め、村内には林業を営む企業があります。
林業は山の急斜面での伐木作業など、危険が伴う作業が多い仕事です。
しかも電波が不安定な山の中での作業がほとんどで、事故が起きてもすぐに救助が呼べず、重篤化する危険性もありました。
また森の木を伐採した後は、植林・育林が大切になってきます。
しかし1本1本手作業で植林した苗をシカなどが食べてしまい、木が育たず、大きな経済損失を受けています。
その被害は日本全体で6,000haと言われています。
増えすぎてしまったシカを捕獲するには、広範囲に罠を設置する必要があります。
そして毎日、罠の見回り作業が必要になるので、村の鳥獣害対策ベンチャー(株)boonboonではその効率化が課題となっていました。
この課題の救世主が、NTT東日本が用意した「高出力LPWA」という技術なのです。
LPWAってなに?
スマホや携帯電話の通信回線LTEやWi-Fi、Bluetoothと言った通信規格や通信機能と呼ばれるものは、 私たちの生活に欠かせないものですよね。
LPWAとは「Low-Power Wide Area」の略。
「低消費電力で長距離の通信」ができる無線通信技術の総称です。
2017年ごろから日本で使われ始めた、比較的新しい技術です。
近距離の無線規格だとWi-FiやBluetooth、
長距離に対応しているものは3GやLTE、4Gといったものがあります。
離れた場所から家にある家電製品を操作したり、子どもやペットの見守りをしたりといった
IoT(Internet of Things) を支えるネットワークとして、このLPWAの通信が使われることに注目が集まっています。
高出力LPWAってなに?すごい技術なの?
皆さんは、山奥や田舎に行った時、ここって電波が届かないんだ!
なんて体験をしたことはありませんか?
小菅村も民家と離れた山の中や林道などでは、電波が入りません。
LPWAの世界でも同じでした。
今までのLPWAは低出力LPWAと呼ばれ、20mWほどの電波の出力でした。
そのため、山やビルなど、地形や障害物の影響を受けやすかったのです。
しかし 高出力LPWAの無線機は250mWまで電波出力が向上。
そのため通信距離が長くなりました。
また従来のLPWAと違って、親機の他に中継器を設置でき、通信範囲をメッシュ的に拡大できるようになったのです。
つまり、小菅村の中心部に親機を設置し、中継器をいくつか設置したら、
電波の届きにくい谷合や山の裏側も含め、ほぼ小菅村全域で電波が網羅されるようになるのです!
NTT東日本の、高出力LPWA通信端末の機能
NTT東日本の高出力LPWA通信端末は、イメージとしてはトランシーバーのような姿の機械です。
気になる機能は、大きく3つ!
①SOS発信ができる
通信端末本体にあるボタンを押すという簡単な操作で、SOS信号が発信できる。
携帯電話のように、いくつかの操作をしなくてもSOSができるのです。
②GPSで位置情報を把握できる
位置情報も把握できるので、事故が起こった現場に直行することができます。
目印のない山の中だからこそ、重要な機能です。
③チャットでコミュニケーションが取れる
スマホに専用アプリを入れることで、チャットが可能になります。
スマホと高出力LPWA通信端末はBluetoothで通信されます。
なのでスマホの通信圏内以外でもチャットでコミュニケーションが取れるのです。
つまり、長年の小菅村の課題が解決される!
林業従事者が携帯電話の電波の届かない山奥での作業中に事故が起こっても、
高出力LPWA通信端末を装着していれば、早急にSOS発信ができるのです。
そして負傷者の迅速な対処ができ、事故の重篤化が防げるようになるのです!
シカなどの獣害対策の現場では、罠の作動を感知するとメールで通知が入るため、効率的に対処ができるようになります。
また仲間と連絡を取り合うとき、今までは携帯電話の電波圏内まで行って連絡を取り合っていたのが、どこでもチャットでコミュニケーションが取れるのです。
人口700人の村の地方創生を IoTでバックアップ。”Smart village“を目指して。
ということで、NTT東日本のすごい技術「高出力LPWAを活用したIoT」の、実証実験の全貌が見えましたか?
豊富な森林資源を抱え、地方創生に積極的に取り組む小菅村。
小菅村を含むエリアの、森林整備や販売事業を担う北都留(きたつる)森林組合。
村の鳥獣害対策ベンチャー企業、株式会社boonboon(ブンブン)。
そして情報通信技術で地域活性化に取り組むNTT東日本の技術を活用して、これまで小菅村で抱えてきた課題を解決できるかもしれません。
人手不足が課題となっていた小菅村が、情報通信技術によって スマート化される。
”Smart village“の夢が叶うかもしれません。
<報道発表の内容はこちら>
NTT東日本HP
青栁やすは
愛知県から小菅村に嫁ぎ、3人の子育てをしています。保育所の体育講師をしながら、小菅村の伝統工芸の「きおび」を使って、作品作りをしています。村に来る前は、環境教育に携わる仕事をしていました。小菅村でのスローライフを研究中。Instagramはこちら