
2017/7/13
ライター:
地主恵亮

動物というものがいる。
犬も猫もハムスターもみんな動物だ。
動物園もあるので、基本的にいつでも動物を愛でることができるのだ。
かわいい動物や、珍しい動物を見ると、興奮する。
では、野生動物はどうだろう。
テンションが上がらないだろうか。
車で走っていたら、シカが出現。
「あ、シカだ!」と誰もがテンションが上がる。
そこで、野生動物の宝庫「山梨県小菅村」で野生動物を探してみたいと思う。
人は「天然」を好む。
養殖の魚より、天然の魚の方が値段が高いのがその証拠だ。
養殖よりも、天然を人々は求めているのだ。
さらに人は「ワイルド」を好む。
例えば、女性は生ぬる男性より、ワイルドな男性が好きだろう、そういうことなのだ。

動物も同じなのだ。
確かに飼い犬や飼い猫はかわいい。
動物園に行けば珍しい動物を見ることもできる。
しかし、我々が求めるのは天然であり、ワイルドなのだ。
つまり野生動物を見たいのだ。世界はそれを求めているのだ。

野生動物を見るべく、山梨県の小菅村にやってきた。
小菅村は山に囲まれた村で、動物の宝庫なのだ、きっと。
もちろん北海道に行ったりすれば、もっと確実に野生動物に出会えるけれど、小菅村は東京から2時間で行けるアクセスの良さが魅力なのだ。

小菅村には猟師がいる。
野生動物がいる証拠だ。
まずは猟師さんに話を聞いて、野生動物に出会う方法や、出会える動物について聞きたいと思う。
動物園とは違うので、行けば見られるわけではないのだ。
宝庫だけれど。

いくらでもいますよ!
見ない日はないんじゃないかな。
そんなにいたら、ここはもはや動物の村です。
でも、いるんですよ、それくらい!
ニホンシカ、イノシシ、タヌキ、アナグマ、
ハクビシン、テン、リス、フクロウ、
カモシカ、キツネ、ミミズク、ツキノワグマ
とかですかね。
見られればですけどね。
いるのはいますが。
動物ってそれぞれの人の中にいるんです!
小菅村には多くの動物がいるそうだ。
私も何回か小菅村に来ているけれど、「クマが出ました」のような放送が村に流れているのを聞いたことがある。
間違いなく動物はいるのだ。
シカくらいなら朝飯前に見ることができるのだ。

昼間はサルがよく出てますね。
集落に降りてきて、屋根の上を走っていたり、畑を襲撃に来たり。
夜は林道を車で走っているとよくシカが歩いています。
日中も山に行けばシカはいます!
そうですね、たくさんいるから見ることができると思います。
電気柵がたくさんあるのが、動物が多い証拠ですよ。
そういうことです!
今日は全然いないけど。
小菅村を普通に移動していたら、動物に出会うことができるようだ。
電気柵は小菅村では日常の風景。
それくらい集落に動物が降りてきて畑を荒らしているのだ。
もはや野生動物に出会えないはずがないのだ。

鈴木さんに弱気なところはあったけれど、話を聞く限り、野生動物に出会える気がした。
シカとサルに出会える可能性は高い。
探しに行こうではないか。
見に行こうではないか。
私の野生はもう目覚めている。
あとは向こうの野生が現れるのを待つだけなのだ。



私の目に映るのは、小菅村の美しき景色だった。
ずっと遠くの緑を見ていたので、目が良くなった気がした。
ただ、いないのだ。
全くいないのだ、動物が。
野性味溢れる私に怖気づいたのだろうか。

考えてみれば、私は赤いジャケットを着ていた。
これが原因かもしれない。
目立つのだ。
赤は目立つ。
赤いフェラーリを思い出して欲しい。
目立つ。
私はいま、赤いフェラーリなのだ。
ブーン、ブーン。
だから野生動物が出てこないのかもしれない。


ギリースーツという自然と一体化したかのように見える洋服に着替えた。
よく見なければ、私がどこにいるかわからないと思う。
これで動物も出てくるのではないだろうか。
だって、人間がいるってわからないから、安心するはずなのだ。




動物の痕跡を見つけることはできた。
ただ本体が全然見当たらない。
私のギリースーツの意味はどこにあるのだろうか。
すれ違う村の子供達に「なにしてるの?」と純粋な疑問をぶつけられた。
なにをしているのだかろうか、俺は。

全然動物が見当たらなかったけれど、頑張った。
都会では見ることのできない野生動物が見たいのだ。
動物がどうしても見たい。
そのために小菅村にやってきてギリースーツを着たのだ。
努力は決して裏切らない。
やがて私の前に動物が現れた。


猫は都会でも見ることができるけれど、この猫は、この個体は都会にはいない。
小菅村にいるのだ。
満足してもいいのではないだろうか。
私がガッツポーズをしてしまっている。
あまりに動物とかがいないので、こうなってしまったのだ。

あきらめた頃についにシカが現れた。
それが上記の写真だ。
米粒のようなサイズではなく、バッチリ大きく写っているのが分かると思う。
やはり生で見ると迫力が違う。
全然迫力がないのだ。
もはや「迫力0」、と言ってもいいかもしれない。

たぶん直線距離で300メートルくらい離れていると思う。
私の持っているカメラが2000ミリという、服も透けるんじゃね、みたいな望遠できるカメラなので、写っているけれど、肉眼だと米粒サイズ。
こういうことではないのだ。
もっと近くで見たいのだ。

すっかり日が暮れたが、今のところ、見ることのできた野生動物は猫と、米粒サイズのシカだけだ。
本当はもっといるのだ。
そんな時に先に帰っていた猟師の鈴木さんから電話がかかってきた。
野生動物がどこかに出たのかもしれない。

鈴木さん:もしもし、ギリースーツなんですけど、
あれ、全然意味ないですよ。
動物は色盲なので、色の判別はできません。
赤いジャケットで何の問題もありません!
むしろ危ないので、やめてください!
猟師さんが間違って撃つ可能性があるので、むしろ派手な色の服を着てください!
僕もオレンジ色の服を着てたでしょ!
遅い!
めちゃくちゃ遅い!

派手ではない服は山では危険なのだそうだ。
夜は猟をしていないけれど、急いで着替えた。
小枝や草が絡まって動きにくいのに頑張って着ていたのだ。
野生動物はむしろ普通の格好の方が、派手なくらいの方が、安全に目撃できるのだ。


夜でも明るく見える「ナイトスコープ」で、動物を探したけれど、相変わらず、私の目に映るのは「木」だった。
小菅村の雄大な自然だった。
動物がいないのだ。
野生動物の宝庫だと思っていたのに。


あきらめて戻ってきて、シカ肉のハンバーグを食べた。
まだ一般販売はしていないのだけれど、2017年の9月頃から小菅村のシカを使ったハンバーグの販売が始まる。
その試作品をもらって来て、食べた。
見つからなかったら、食べればいいのだ。
(2017年11月から、ハンバーグ・精肉が販売されています。)

そういえば、猟師の鈴木さんが言っていた。
「動物ってそれぞれの人の中にいるんです!」と。
あの時は意味が分からなかったけれど、食べる、ってことなのかもしれない。
動物は見るものではない、食べるものなのだ。
そういうことにしたいと思う。

野生動物を探したけれど、この日は見つけることができなかった。
でも、本当はいるのだ。
いすぎて、村の人たちは動物を見ても別にテンションも上がらないそうだ。
日常になっているのだ。
詳しい人のガイドツアーに参加すれば、ほぼ100%見つかるそうだ。
つまり、この日の私は凄まじくついてなかったことになる。
でも、美味しかったからよかったことにしようと思う。


地主恵亮
1985年福岡生まれ。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。東京農業大学非常勤講師ですが、たいだい家にいます。ご連絡は「jinushikeisuke@gmail.com」までお願いします。
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