ぷるっぷるで美味しい!丹精込めて作る日喜屋のさしみこんにゃくができるまで。
2023/06/06 ライター:青栁やすは
小菅村でこんにゃくを作っている生産者さんには、河村食品と日喜屋(ひきや)があります。
ころんと丸い形が目を引く、日喜屋の手作りこんにゃく。
ぷるっぷるの舌触りから山のフグ刺しとも呼ばれる、道の駅こすげで人気のお土産です。
そんな日喜屋のこんにゃくは、こんにゃく芋づくりから販売まで、ご夫婦の手間ひまと愛情がたっぷりとかけられています。
今回は、日喜屋のこんにゃくができるまでの1年間を追ってみました。
こんにゃく作りを手掛ける、日喜屋3代目
日喜屋3代目の木下新造(きのしたしんぞう)さんと町子さん。
新造さんのお家「日喜屋(ひきや)」は、代々こんにゃく芋を生産する農家さんです。
3代目の新造さんになってから、こんにゃく作りも手掛けるようになったそうです。
1つひとつ手間ひまかけた、こんにゃく作り
日喜屋のこんにゃくは、小菅村産こんにゃく芋を100%使用。
ころんと丸い形のこんにゃくは、ぷるっぷるでやわらかく、こんにゃく自体のうま味も感じられ、スーパーのこんにゃくしか知らなかった筆者は初めて食べて時には驚いたものです。
丸い形のこんにゃくは、ミキサーにかけたこんにゃく芋をさらに手作業で混ぜ、手で成形されます。
町子さんが大きなボールからすくった、とろみのあるこんにゃく芋の液体は、両手を行ったり来たりする間につるんとした形に。
町子さんの手から、さらに大きな手の新造さんに渡され、こんにゃくは丸々とした形になります。
新造さんの手からそっと沸騰したお湯に入れる…という2人の息がピッタリの作業で、桶にいっぱいあったこんにゃく液が鍋に入ります。
型を使わずに手作業でまぜてやさしく成形することが、びっくりするくらいやわらかいこんにゃくになる秘訣だそう。
ぷるっぷるのやわらかいこんにゃくにするために、一つひとつ手間ひまがかかっていました。
この日は成形したこんにゃくを茹でる傍ら、こんにゃく芋を工場の外の釜で茹でていました。
このお湯を沸かすのには、新造さんが山から間伐した薪を使っているとのこと。
「こんにゃくを作るのに、森も管理されているんですね!」と驚くと、
「こんにゃくができるまでに、いろいろと手間ひまかかってるんだよー。
本当だったら、もうちょっと高く売りたいんだけどねぇ。」
それでもお手頃価格で売っている理由は、「せっかく小菅村に来てもらったら、手に取りやすい値段にしたいから。」だそう。
惜しまず手間をかけ、真面目にこんにゃく作りに取り組むお2人の姿が印象的でした。
秋はこんにゃくの材料、こんにゃく芋の収穫
日喜屋のこんにゃくは、自分たちの畑で栽培したこんにゃく芋をメインに使用。
さらにご近所の農家さんからもこんにゃく芋を買い取り、小菅村産のこんにゃく芋を100%使用しています。
こんにゃく芋の収穫は10月末。
夏に大きく茂った地上部が枯れるころに収穫します。
といっても、畑のこんにゃく芋を全て収穫するわけではありません。
こんにゃく芋は収穫までに4年かかるので、茎や葉っぱの大きさを見て収穫するこんにゃく芋を決めます。
この方法を自然薯栽培と言って、収穫しないこんにゃく芋は日当たりのいい畑の中でそのまま保存されます。
収穫するこんにゃく芋の目利きをするのが新造さんです。
茎や葉っぱが枯れてからでは大きさが分からなくなってしまうので、枯れてしまう前に目印の棒を立てます。
その目印をたよりに、地上部が枯れた後に収穫をするのです。
こんにゃく芋を掘り上げるのも手作業。
二股の短い、ちょっと変わったクワを使います。
4年かけて大きく育ったこんにゃく芋は、収穫後にかごに入れて急斜面を人力で運び降ろします。
その重さは20~30kgほどになるそう!
日喜屋の畑は”かけじく畑”と呼ばれる畑の一角にあります。
かけじく畑はかけじくがいくつも連なっているような急斜面の畑。
最大斜度は40度と言われ、スキーのジャンプ台と同じ斜度と言われています。
さくさく歩く町子さんに付いて畑を歩かせてもらいましたが、筆者はなかなか思うように進めないので「こっちに回り込んで歩くといいよ」と言われるほど大変な場所でした。
収穫したこんにゃく芋は、茹でた後に冷凍して保存されます。
これで1年中、こんにゃくを作ることができるのです。
10月は、近所のこんにゃく農家さんから買ったこんにゃく芋を、洗って・皮を剥いて・茹でて…と大忙し。
自分の畑のこんにゃく芋は、これが済んでから収穫するため、新造さんの目印がたよりになるそうです。
こんにゃく芋は、何から育つ?
こんにゃく芋はジャガイモやサトイモのように、種芋から育てます。
4年かけて大きく育ったこんにゃく芋には、小さな子芋がくっついています。
この部分が畑に残り、こんにゃく0歳がスタートするのです!
夏はこんにゃく畑の草取り
夏は一番大変な作業の時期。
こんにゃく畑に雑草が生えるからです。
こんにゃく芋にしっかり栄養が行き渡るように、毎日のようにこんにゃく畑に通い、しかも1回だけではなく何回も畑の雑草を手作業で取っていきます。
しかも日当たりのいい斜面ですから、夏の作業は一苦労です。
冬は麦を育て、落ち葉集め
こんにゃく芋の収穫が終わった後、冬にも仕事はあります。
こんにゃく芋の収穫後、ライ麦を畑にまきます。
ライ麦は育てて緑肥になります。
ライ麦が成長している間は、落ち葉集めや山の仕事をするそう。
集めた落ち葉は畑にまかれ、こちらもこんにゃく芋の栄養となります。
GWごろは、麦刈り
5月のゴールデンウィークに入り、ライ麦の穂が大きくなり始める頃、ライ麦を刈って畑に倒します。
青いライ麦が刈られると、畑の色が変わるので、遠くからでもよく分かります。
ライ麦は畑にまいた木の葉を押さえ、こんにゃくの肥料となります。
さらにライ麦は急斜面の畑で大雨が降ったときに土が流れないようにし、草が生えにくく、夏にも適度な湿度を保ってくれ、色々な役割をはたしてくれます。
1年間、手間ひまかけて、こんにゃくが作られている!!
こんにゃくを作るだけでも、手間ひまかけられていましたが、こんにゃく芋作りにもものすごく手間がかかっていて、日喜屋のこんにゃくへの愛情がとっても伝わってきました。
また新造さんは「こんにゃくは生薬にもなる」と教えてくれました。
胃の中の砂(老廃物や毒素)を取ってくれる、長生きのための食べ物、と昔は重宝されていたそう。
日喜屋の手作りこんにゃく、一度召し上がってみてはいかがでしょうか。
【こちらで購入できます】
・道の駅こすげ 物産館
青栁やすは
愛知県から小菅村に嫁ぎ、3人の子育てをしています。保育所の体育講師をしながら、小菅村の伝統工芸の「きおび」を使って、作品作りをしています。村に来る前は、環境教育に携わる仕事をしていました。小菅村でのスローライフを研究中。Instagramはこちら