住んでいない集落が実在する!一人しかどんな生活か聞いてみる
2017/03/20 ライター:矢野加奈子
人は一人では生きていけないものだ。
他人との関係が希薄になった現代でさえ、誰かと繋がっていたいと、願ってしまう。
それが人なのだ。
だが、山梨県小菅村にたった一人しか住んでいない集落が存在した。
村内の他の集落や別の地域に引っ越すこともできるのに、それをしないでいるのだ。
なぜなのか聞いてみたい。
そう思い、会いに行くことにした。
山梨県小菅村東部地区大成
山梨県小菅村は東京から車だと2時間くらいでいける。
山梨県北都留郡にある人口720人ほどの山間の村だ。
東京のすぐ隣にありながら、その山深さから自然の豊かな村で、豊かすぎて山に手が届きそうなほどだ。
そんな小菅村の一番東側にあり、東京都に接している東部地区はかつての甲斐の国の関所があった場所で、小菅村の玄関口。
この東部地区に住民が一人という集落が存在する。
それが「大成(おおなり)」集落だ。
人工林の山道を10分ほど進むと、日が差し明るくなってくる。
川を越え、ちらほらと家が現れはじめると、そこが大成だ。
山道を進むと
だんだんと日当りがよくなり
集落が現れます!
天空の集落「大成」
大成地区は山の上にある集落なので、日当たりが良くてめちゃくちゃ爽やかな空気が流れている。
一言で言うと「気持ちのいい集落」なのだ。
ボキャブラリー不足でうまく伝えられないが、訪れただけで、この集落の魅力が少しだけわかった気がする。
高い位置にあるので、まるで天空の集落のようでかっこいい。
それだけでも魅力的だが、この集落には、最後の一人になっても住みたい! という魅力がもっとあるはずなのだ。
それを聞きたい。
その土地に住む人にしかわからない魅力というものがあるはずだ。
そこで、この集落に住む最後の一人小林寿道さんを訪ねた。
土地の持つ記憶を聞く
小林さんはここ大成で生まれ育ち、一度は村外に働きに出たが、8年前に村に帰ってきた。
家があったからというのが一番大きな理由だが、やはりこの大成が好きだからという理由もあったそうだ。
でもこの集落にはこの集落のよさがたくさんあるし、楽しい事もあるよ。
同級生の家もあるよ。
ここから下った金風呂という集落に移ったり、今でも週末だけ帰ってくる人もいるかな
まあ普段住んでるのは一人だけど
人が住んでいた土地には、その人たちの生活があり、それが土地の歴史であり記憶だ。
小林さんにそんな土地の記憶を聞くと、ここ大成で生活する人々が見える気がする。
小林さんが持つ大成の記憶をお聞きしました。
通学は山道を歩いて1時間 山の上なので、学校や商店はない。
大成の方はどのような生活をし、今どのように生活しているのだろうか。
すごい!
歩いて1時間半くらいで行ってたんだよ。
しかも往復!
帰りは登り!
私だったらさぼる!
でも当時はこの地区にも同級生がいたから迎えにきちゃって、そういう時はちゃんと通ってたな。
ここは日当りがいいし暖かいからね。
ここ平らな所あるんですか?
畑とか、まあ、あんまりないけど。
子ども達にとっては「遊べる所が遊び場!」という感じだったそうだ。
この日もよく陽が当たりぽかぽかと気持ちよく、ここで遊んだら楽しいだろうなという感じの沢などがたくさんあった。
空も比較的広いし、空気も澄んでいるのか、よく見えるよ。
星見に来たいけど、それ見るには夜ここに来ないと行けないのか!
他にも、ここの集落の上に仏舎利塔という仏様の骨や教典をおさめていると言われている塔もあるんだ。
そこもいいよ。
でも昔、大寺と小寺というお寺が上にあったらしいんだけど、そのお寺から鐘が落ちて、下の集落は金風呂という名前になったらしいけどね。
鐘がゴロゴロっと!
こわっ!
大成に関するそういう話しも伝えていきたいね。
なぜこの集落に住むのか
実際に訪れて小林さんに話しを聞いて、この大成という集落の魅力がわかった気がする。
確かに気持ちのいい集落なのだ。
でもやっぱり一人って寂しくないかな、と単純な疑問として浮かんでくる。
やはり交通の便は不便ですか?
八王子で働いてた時は、仕事も買い物も、何でも近くて便利だなーとは思ったよ。
それは楽しそう!
少し下りればみんないるしね。
生まれ育った土地だから
最後に、ずっとここに住み続けたいですかと聞くと、まぁ、やっぱりこの土地で生まれ育って、ここが好きだから住めるうちは住みたいなとにっこり笑って答えてくれた。
大成のお日様のようにぽかぽかで気持ちのいい笑顔だなと思いました。
矢野加奈子
多摩川源流大学担当のスタッフです。美味しいものと楽しいこととズゴックが大好きな平均的な人間です。 源流大学で「ちゃの」と言えば私のことです。名字の「やの」とは関係ないけど。